このページをご覧になる管理組合様は近い将来大規模修繕を考えておられる事でしょう。大規模修繕はマンション建物・設備の安心・安全の維持に欠かせない作業ですが、その実施には多大なコストと作業負担がかかります。ここでは大規模修繕を正しい方向に導けるよう、その要点と進め方についてご紹介します。
とりわけ大規模修繕を初めて経験される管理組合様、または初めて管理組合主導で実施をお考えの理事様を対象に技術系マンション管理士大橋が経験上のお話しをさせて頂きます
大規模修繕とは

人間同様、建物・設備も古くなればあっちこっちにガタがきます。雨漏り、外壁のひび割れ、タイルの剥離、モルタルの剥離、防水層の亀裂、人間に例えれば内臓である配管の劣化、設備機器の老朽化等々・・・その結果、さまざまなところに影響がでて快適さを失うばかりでなく、その維持保全には多大なコストがかかります。
◎大規模修繕の目的と内容
経年変化による建物の劣化を完全にあるいは永久に食い止めることは不可能ですが、劣化を遅らせ建物を長持ちさせる努力を怠るわけには行きません。そのために行われる作業として、点検(劣化の度合いの調査)、メンテナンス(=保守:最適な状態を維持する作業)そして修繕(劣化部を修復)があります。大規模修繕は、定期的に建物の劣化度をチェックし痛んだ箇所を実用上支障のない状態に修復する大変重要な工事となります。
しかし、じつはマンションの不具合箇所は劣化による部分だけとは限りません。社会環境や生活スタイルの変化により建物設備の機能として新たに要求されてくる部分も出てきます。せっかく多大な経費をかけて建物全体を見直す大工事を行う機会なのですから、こうしたグレードアップ(機能の改善)も視野に入れた工事計画を立案することが望ましいといえます。
○劣化を修復する工事: | 外壁修復・再塗装、鉄部塗装、防水再加工・・・など |
○機能を改善する工事: (グレードアップ) |
給水ポンプ方式の変更(増圧方式)、セキュリティ強化、段差解消(バリアフリー化)・・・など |
大規模修繕計画の実際
◎大規模修繕の時期:
大規模修繕はいま本当に必要なのでしょうか。管理会社に促されるままに準備を進めていませんか?一般に大規模修繕の実施時期は12年周期とも言われていますが、あくまで目安でしかありません。重要なことはまず修繕が必要な時期であるかを見極めることであり、その手立てとなるのが「建物・設備の簡易診断」です。これによって建物外壁や屋上防水をはじめ各箇所の劣化度合いを診断することができ、修繕の要否を判断する材料を提供してくれるのです。 これは長年ゼネコン勤務経験で得た貴重な財産と自負致しております。
★大橋マンション管理士事務所は「建物・設備簡易診断」のご依頼を承っています。
詳しくは「建物と設備の診断」ページをご覧ください。
★「建物・設備簡易診断」の費用は、50戸の単棟型マンションの場合15万円です。
詳しくは「費用について-簡易建物診断費用」をご覧ください。
◎大規模修繕計画の立案(工事設計):

いざ修繕を行う場合、最初に修繕や機能改善の必要な項目を洗い出し、工事仕様を決定するために、設計コンサルタント(設計事務所、マンション管理士等)を選定するのが一般的なやり方です。設計コンサルタントはどのようにして探したらよいでしょうか?
よくやられている方法は3つほどあります:
一つは管理委託会社に依頼する、しかもその後の施工会社選定まで含めていわゆる”丸投げ”する方法です。管理組合にとっては一番楽な方法ではありますが、じつは最悪の方法と言えます。管理会社からすれば自社の系列または関連の設計、施工業者を採用することができ費用決定の経緯が不透明です。結果的に高い費用を支払うことになります。
二つ目によくあるのは、理事の紹介(いわゆるコネ)で設計事務所を選ぶ場合です。本当にいい事務所ならいいですが、経験の少ない事務所に依頼をしてしまっては満足のいく修繕はできません。金額の多寡以前の話です。しがらみのあるコンサルは良く考慮し公平、冷静な判断を仰ぎたいものです。
三つ目にインターネット検索で探す方法があります。実績のある事務所をさがして依頼するのはいい手段ですが、ここでポイントとなるのは、まず4~8社を候補として選びその中からベストな建築コンサル(設計コンサル、マンション管理士等)を決定して進めることです。パンフや経歴書を持参して来て頂く、実際に会って話を聞き自分達の目で確かめ決定することが一番ではないでしょうか。
大規模修繕工事の流れと管理方式
◎大規模修繕工事の流れ:
一般的な大規模修繕工事の流れと進め方を以下に示します。

- 管理組合の発案
↓ - 専門委員会の設置・検討
↓ - 専門家(コンサル)の決定 ⇒調査・診断依頼
↓ 「建物診断調査」の実施 - 診断・調査
↓[調査・診断書契約] ←調査、診断、修繕基本計画 - 基本計画書の作成、報告
[図面、仕様書の作成]
↓設計・仕様書作成 契約 ←修繕設計図提出 - 施工業者の決定
↓施工業者選定への協力 - 資金計画の再検討、見積もり条件書
↓現場説明、図面渡し - 総会決定(普通決議)、業者見積もりチェック等
↓ - 工事請負契約、工事監理委託契約の作成
- 工事着手、工事監理
◎工事の進め方 -3つの管理方式:
工事の進め方には下記の3つの管理方式があります。
- 設計監理方式(最も一般的な方法です)
マンション管理士、設計事務所を選び技術的な指導を仰ぎながら工事を進めていく方式
- 利点: 工事の厳正なチェックができる。施工会社を同一条件で選定できる。
- 欠点: 管理組合様はかかわりが多くなる。(工事業者と設計監理者)
- 責任施工方式
- 利点: 信頼のおける業者を数社選定し工事から監理までを依頼する
- 欠点: 価格競争がなくなる。選定基準が曖昧。第三者のチェックがない。
- 管理会社主導方式
- 利点: 管理組合は楽ができる。
- 欠点: 管理組合の自主性がない。金銭的に不安。管理会社の善し悪しで差がつく。
◎「設計監理方式」を採用した大規模修繕の実施をおすすめします。
設計コンサルタント、施工業者を公正に選定することができ、入札による競争原理を導入することで価格も適正に抑えられます。

◎大規模修繕工事のポイントはその(修繕)時期かどうかのジャッチです。
最重要はいいコンサルを選択できるかどうかで、工事金額の全てが決定します。
診断の結果が良好でまだ工事しなくてもいい時期であればもう少し先に延ばすことも可能です。すぐ工事が必要な時期であれば12年周期なんて関係ありません。建物の寿命を延ばすことが先決です。また本当に信頼できるパートナーを獲得することによって、計画中もしくはこれから計画する「大規模修繕工事」を成功させることができます。
大規模修繕、建物設備診断のことは大橋マンション管理士事務所にお気軽にご相談ください。